失業保険は退職理由で2倍以上の差がつくことも!?

失業保険は退職理由によって所定給付日数が変わります。自己都合退職した人の所定給付日数は90日~150日、一方会社都合退職した人は90日~330日です。どうしてこのような差がつくのか詳しく解説します。

会社都合で退職すると所定給付日数が2倍以上に増えることも

退職理由で変わる失業保険の金額

まずは次の例を見てください。

自己都合退職したAさん45歳/雇用保険の加入期間10年

 所定給付日数=120日

会社都合退職したBさん45歳/雇用保険の加入期間10年

 所定給付日数=270日

所定給付日数とは失業保険がもらえる上限日数のことです。同じ年齢で、雇用保険の加入期間も同じ10年なのに、所定給付日数が2倍以上差がついています。失業保険の日額(基本手当日額)は退職理由では変動しないので、仮にAさんBさんの基本手当日額が7,000円だとすると、

・Aさん=120日×7,000円=84万円
・Bさん=270日×7,000円=189万円

総額にするとその差は2倍以上、100万円以上も差が出ることになります。

退職理由が「自己都合」か「会社都合」でこれほどの差がつく失業保険。ハローワークはどのような基準で2つの退職理由を判断するのでしょうか?



退職理由の「自己都合」と「会社都合」、ハローワークの考え方は

会社を辞める理由は人それぞれです。「転職してスキルアップしたい」「結婚して専業主婦になる」「人間関係がしんどくなった」「通勤時間が長すぎる」「転勤になった」「会社が倒産した」など。

ハローワークは個別の退職理由を大きな括りで「自己都合」か「会社都合」に分けます。

自己都合退職とは、自ら判断して退職することです。

  • 「転職したくなった」
  • 「他の会社から誘われた」
  • 「結婚して専業主婦になる」
  • 「仕事が自分に合わない」
  • 「人間関係でギクシャクしてる」
  • 「給料が上がらない」

いわゆる会社の一方的な都合ではなく、自分が主体的に考えて決めた退職のことを自己都合退職といいます。

一方、会社都合退職とは、自分にはまったく非のない理由で退職することです。

  • 「会社が倒産した」
  • 「会社の業績不振でリストラされた」
  • 「会社が遠方に移転するため通勤できなくなった」
  • 「給料が支払われない」
  • 「法外な残業を強いられる」
  • 「上司のパワハラがひどい」

会社都合退職した人のことを「特定受給資格者」ともいいます。

ハローワークはこの2つの退職理由「自己都合退職」「会社都合退職」を分けて考え、失業保険の所定給付日数と、給付制限(自己都合退職の場合は始め3ヶ月は失業保険が貰えない)の有無を決定するのです。


退職理由で失業保険に差をつける理由は?

「自己都合」か「会社都合」かの大きな違いは、「退職することを想定して事前に準備ができる状態だったかどうか」です。

自己都合退職の場合は、退職する以前から計画的に転職活動を行ったり、無職になる期間の生活費を貯金しておくなどの準備ができます。

ところが会社都合退職の場合は、自身に退職する意思がない状態でやむを得ず退職することになったため、無職になることを想定して転職活動や貯金をあらかじめ行う余裕はなかったと考えられます。

収入が無いなかで転職活動を行うにあたり、この2つの違いは生活に大きな影響を与えます。

そのためハローワークでは退職理由によって失業保険の支給内容を変えているのです。



自己都合退職だけど、これって本当に自分の都合?

本当に自己都合退職?

「自分で退職すると決めて、退職届けには一身上の都合と書いた。でも本当は自分の都合だけとは思えない。」

退職を決断するには、それなりの理由があったはずです。本当は辞めたくなかったけど辞めざるを得ない理由ができてしまった。単純に「自己都合」と決められてしまうことに疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

そう思う人は、もしかすると「特定理由離職者」に該当するかもしれません。

特定理由離職者とは例えば次のような理由でやむを得ず会社を退職した人です。

  • 「病気のため」
  • 「親の介護の」
  • 「家庭の事情で遠方に引っ越すため」
  • 「通勤できない場所へ異動になったため」
  • 「法定を超える残業時間のため」

このような一方的に個人の都合とはいえない理由で退職した人が特定理由離職者に該当します。詳しくは特定理由離職者とはで解説しますが、特定理由離職者としてハローワークに認定されると、会社都合退職と同じ条件で所定給付日数が付与され、また3ヶ月間の給付制限も免除されます。

もしも自分の退職理由が特定理由離職者にあたるのではないかと思う場合は、失業保険の手続きの際に退職理由についてハローワーク担当者に相談してみましょう。



まとめ

失業保険は退職理由によってこれほど支給内容に差がつくのです。所定給付日数の違いによる金額の差も大きいですが、給付制限3ヶ月が有るか無いかも重要なポイントになります。

失業保険は、実際に指定口座に基本手当が振り込まれるまでに、少なくとも1ヶ月以上は待たなくてはなりません。これが自己都合退職だと3ヶ月の給付制限があるために、振込があるのは4ヶ月ほど先になることもあります。

生活資金に余裕のある人は問題ないかもしれませんが、そうでないと非常に厳しい状況になります。ハローワークで失業保険の手続きをするとき、必ず離職票の退職理由について確認があります。もしそこが自己都合退職になっている場合は、ハローワーク職員に相談し、特定理由離職者の認定が可能かどうかの確認をするとよいかもしれません。

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