失業保険の不正受給だけは絶対にやってはいけない理由とは

失業保険を不正に受給することは犯罪です。悪質なケースの場合、刑事告発されると同時に、不正に受け取った金額と、その金額の2倍のペナルティを支払わなければなりません。いわゆる3倍返しです。

よくある不正受給のパターンまとめ

失業保険の不正受給

以下は失業保険の不正受給でよくあるケースをまとめたものです。

  • 求職活動を行っていないのに、失業認定申告書に偽りの活動実績を書く
  • アルバイト収入があるのに、失業認定申告書では働いていないことにする
  • 就職が決まったのに申告しない
  • 就職日を偽って報告する
  • 本人を装い、他人に失業認定を受けさせる
  • 各種証明書を偽造する
  • 離職票の内容を偽り、不正な日額手当を受け取る
  • 健康保険の傷病手当金などを受けているのにそれを申告しない

失業保険を受給している人は月に1回「失業認定」を受ける必要があります。その日以前1ヶ月間の求職活動状況、アルバイト収入などがあった場合は働いた日付と収入金額などを申告します。

この手続きによりハローワークから失業者としての認定を受けるのですが、失業保険の不正受給として多く告発されている事例の1つに、この失業認定日に提出する「失業認定申告書」への虚偽記載があります。

失業保険受ける人は月に1回以上の求職活動が義務付けられています。何月何日に〇〇株式会社に面接に行ったなどの活動状況を記さなくてはなりませんが、本当は何の活動もしていないのに、あたかも面接に行ったかのようにみせ虚偽の記載をする。

またはアルバイトをして収入を得たのに、失業保険の減額を嫌がり、働いていないことにしてしまう。

これらの行為はすべて不正受給となり、悪質な場合は、刑事告発や重たいペナルティ金が課せられることがあります。


悪質な不正受給には「3倍返し」が待っている

不正受給が発覚した場合は、次のような処分を受けることになります。

  • 【支給停止】不正が発覚した次の日から失業保険がストップします
  • 【返還命令】不正に受給した金額をただちに返還しなくてはなりません
  • 【納付命令】不正に受給した金額の2倍の金額を納付しなくてはなりません

1と2は当然の処分として、最も厳しい処分は3ではないでしょうか。2と3を合わせた金額は、不正受給した金額の3倍になります。所得税の脱税もそうですが、国を欺いた不正行為についてはとても重たいペナルティが課されられます。

もし不正受給した金額が100万円なら、100万円+200万円=300万円の納付が義務付けられます。これが払えない場合は、財産(銀行預金、給与、不動産など)の差し押さえなどによる強制処分を受けることになります。



不正受給は絶対しないほうがよい理由

不正受給をしてもバレなければ良いという考えは捨てたほうがいいかもしれません。不正受給のペナルティは3倍返しと前述しましたが、これを期待値で考えると次のようになります。

例えば100万円を不正受給したとします。不正受給がバレるバレないの確率を2分の1としましょう。この場合、不正受給がバレたら300万円の返還をしなくてはなりません。これらを踏まえて「期待値」を計算すると次のようになります。

(100万円【バレない場合】+(▲300万円【バレた場合】))× 1/2 = ▲100万円

つまり不正受給の期待値はマイナス100万円となります。これを言葉で言い換えると、「不正受給している時点で、実はその金額を得ることはできず、むしろ逆に同等額を支払っている」ということになります。

この説明方法には賛否あるかもしれませんが、「不正受給は絶対してはいけない」というのは確かな結論です。



不正受給はこうやってバレる

不正受給がハローワークにばれる主な理由は次の通りです。

  • 事業所(会社)への調査
  • 家庭訪問
  • 第三者からの通報
  • 本人からの申し出

例えば不正受給の理由で「就職が決まったことを報告しない」の場合、就職した先の会社が、雇用保険の資格取得届をハローワークに届け出た際、本人からの就職の報告がなく未だ失業保険の受給中だったりすると、不正受給しているとみなされる可能性が高くなります。この場合、ハローワークから就職先の会社に調査が入り、面接日や内定日などを把握したうえで不正が無かったかどうか判定します。

また、不正受給がばれる要因で多いのは、3.第三者からの通報です。ハローワークだけに限らず、各都道府県の労働局なども不正受給防止には力を入れており、通報窓口を設置するなどの対策を講じています。

さらに2017年からはマインバー制度が本格的に導入され、今後は各官庁は個人の収入・課税状況などを容易に把握できるようになってくるため、不正受給の発見頻度も上がってくることが予想できます。



まとめ

「不正受給は絶対しないほうがよい理由」でも解説したとおり、失業保険の不正受給は「ハイリスク・マイナスリターン」なのです。

また意図的ではなくても、失業認定申告書に記入しなくてはならないことを書き忘れたり、就職が決まった後ハローワークに報告し忘れるたなどということも、不正受給とみなされることがあります。

失業保険は「雇用保険」という国の貴重な財源から拠出されるものです。それを不正に得ようとす者に対しては、国は容赦ない厳しい処分を下すということはよく覚えておきましょう。

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